【コラム】住民税が控除に?高所得者に有利な「ふるさと納税」 ~前編~

 「ふるさと納税」は知る人ぞ知る“高所得者が得する制度”

年度末に差しかかった3月は、決算の都合などから個人事業主や投資家の方にとって何かと忙しい時期です。多くの方が非常に煩雑な確定申告を終えて一息ついている頃ではないでしょうか。しかし、確定申告を行うために今年度を振り返ってみるころで、「もっと節税できたところがあったのでは?」と課題が浮き彫りになった方もいるでしょう。そこで今回は近年、節税対策として注目を集めている人気の「ふるさと納税」について紹介します。

 

増加傾向にある「ふるさと納税」の受入額実績

「ふるさと納税」は、自身が発展に貢献したいと考える都道府県・市区町村(ふるさと)へ、自発的に寄付金を支払う制度です。そのため、新たに納めなければならない税金ではありません。ネーミングにもある“ふるさと”というワードから自身の故郷や現住所を想起される方がほとんどかと思われますが、その定義はなく、自身とまったくゆかりのない地でも「応援していきたい」という考えがあれば、寄付金で貢献することができる点が最大の特徴です。

 

「ふるさと納税」は“ある地域”に寄付した金額の一部を税金から差し引くという考え方であり、寄付金を支払うことによって納めるべき税金の額が控除されます。多くの方が寄付金を自発的に納めるという点において、これまでの制度とは一線を画すのです。

 

そうした制度の特性もあり、近年、メディアなどで「ふるさと納税」というワードを見聞きする機会が増えています。総務省自治税務局市町村税課が平成28年に発表した「ふるさと納税に関する現状調査結果」によると、平成27年度の「ふるさと納税」の受入額実績は約1,653億円。前年比の約4.3倍に跳ね上がっており、増加傾向はこれからしばらく続く見込みです。

 

「ふるさと納税」を行うことのメリットとは

自身が望む地域(ふるさと)に寄付金を納めることができる制度――という情報だけでは多くの方は「ふるさと納税」にメリットを感じないでしょう。ただ寄付金を払うだけの制度では、支出が増えるだけです。ではなぜ多くの人が「ふるさと納税」を行っているかというと、「特産品・特典がもらえる」「税金が控除される」という2つの大きなメリットがあるからです。

 

メリット1:特産品・特典がもらえる

「ふるさと納税」の一番の醍醐味と言えば、寄付金を納めた地域が指定する特産品や特典をもらえることです。米や肉、魚などのその土地にゆかりのある食品から、旅行券や観光スポットの割引券など、寄付金の約50%相当に当たるものが手に入ります。

 

中には100万円以上の寄付でテレビのニュースキャスターになれる(兵庫県多可郡多可町)という非常にユニークな特典や、尾花沢雪降り和牛50kg(山形県尾花沢市)という豪華な特典もあります。また、母の日などのイベント用にバラのギフトセット(愛知県碧南市)や、他にも家族のためにおいしい食材や温泉旅行などのプレゼント目的として利用している方も多いようです。ただし、人気の特産品や特典は申込みが殺到してすぐに締め切られてしまう傾向があるのであらかじめ注意しましょう。

 

メリット2:税金が控除される

特産品・特典以上に大きな意味を持つのが税金の控除です。寄付金を納めた額は2000円を除いて控除対象になるので、「ふるさと納税」は節税対策としても大きな注目を浴びています。寄付金が2000円を超えないと控除の対象にはなりませんが、地域に寄付した金額の一部が住民税と所得税から控除されます。

 

なぜ「ふるさと納税」は高所得者ほど有利な制度なのか?

税金の控除ですが、具体的にはどのくらいの額が見込めるのでしょうか。たとえば、4万円のふるさと納税を行った場合、以下のように税金が控除されることが想定されます。

 

【4万円のふるさと納税を行ったケース】

・所得税(40000円-2000円)×10%=3800円が還付金に(寄付した年)

・住民税(40000円-2000円)×90%=34200円が減額に(寄付した翌年)

=負担は2000円のみで38000円の控除に

※控除額は年収や家族構成などにより異なります

 

上記のように「ふるさと納税」は寄付金を支払っても、負担は2000円のみで後は控除の対象になるため、特産品・特典をもらいつつ、税金を控除できるという夢のような制度なのです。しかも、住民税に関しては2割までが控除対象となるため、住民税を多く納めている高所得者ほど恩恵を受けられます。たとえば、年収2000万円で住民税を年間で250万円ほど支払っている家庭でのケースでは、魅力的な特産品や特典を受け取りつつ、年間50万円までの住民税控除が受けられるのです。

 

このように住民税を多く支払っている人ほど、ふるさと納税制度の活用の範囲が広がります。実質負担額や納税控除分は年収や家族構成などにより異なりますが、有益な節税対策になることは間違いありません。高所得で節税対策について検討されている方であれば、「ふるさと納税」を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか?

>>【後編へ続く】難しくない?「ふるさと納税」の確定申告の方法

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